僕が創業して売却した会社の競合である就活支援サイトのワンキャリアにて、興味深い議論が起きていました。
#ワンキャリQA にて、大変考えさせられる声を頂戴しました。今週うーうー唸りながらお返事を考えていたのですが、なんとか文章にまとまったのでスクショでもシェアさせてください。
— めいこ@就活サイト ワンキャリア (@meiko_oc) 2018年6月24日
ワンキャリアの一員として、かつて死にたいほど苦しんだ元就活生として、全力で書きました(長い…) pic.twitter.com/ityVrMlVxj
リクルートが生み出した就活システムは学生からも大学関係者からも評判が悪く、リクルートが生み出した価値の部分よりも負の側面が強調されて批判されてしまいがちです。今回の議論はそのような評判の悪いリクルート的な価値観とは対局にいてほしいとユーザーが期待する人材系のインターネットベンチャー企業が結局、リクルート的な価値観と同じだったのでは?というユーザーの疑問からスタートしていました。この点については自分自身もHRの領域にいたことから考える機会が多かったのでポエムを書いてみたいと思います。
これまでのインターネットが救ったものと救えなかった
いつか言語化したいと思ってTwitterのいいねにいれて放置していたのですが、これまでのインターネットが救ってきたものについては下記のTweetが的を得ていると思っています。
インターネットは「能力はあるのに情報がないせいで幸せになれなかった人生」を救い「能力はないけど情報もないので不幸ではなかった人生」を破壊したねえ。
— あいふぉんちゃん (@u_x_z) 2018年5月7日
溢れる情報の中から、自分の能力や環境に見合った、最大公約数の選択肢を選びとって、実行し、予想通り幸福になれる人間にとってのみ、開かれた情報は役に立った。情報取捨の自由競争化は、結局は「それが出来る高能力者」に有利なだけの、自由でも平等でもない自然状態。
— あいふぉんちゃん (@u_x_z) 2018年5月7日
就活市場においても情報がオープンになることで、いわゆる「情報強者」が得をしてきました。リクルートが生み出した就活システムはこれまで企業に所属する人の人的つながりや企業と大学、研究室などのつながりを元にした採用から、オープンな求人情報により、誰もがどの企業にも応募できるようになりました。これで得するのは実力はあるけれど、これまでの就職活動では求人にそもそもアクセスできなかった層です。
求人情報がオープンになったのがリクナビがネット化し各社が導入した2000年代だとすると、就活ノウハウや選考情報のオープン化が始まったのが2010年代で、まさに僕らがやろうとしたことです。下記のブログでも書いていますが、当時の僕自身がやりたかっったことは、「ちょっとした情報の差やテクニックの差で人生を大きく左右する就職活動に大きな影響が出てしまう」という現状を、「就職活動に関する情報をオープンにすることで学生本来の実力や実績が評価される」ということでした。
ここでも得をしたのは、オープンになった就活ノウハウや選考情報というあふれる情報の中から自分に合った情報を取捨選択し、実行する能力のある人たちです。情報をオープンにすることで情報強者が得をするという結果は、リクナビも就活情報系のベンチャー企業が提供するサービスも変わりません。
Twitter、facebookといったSNSの普及が情報の取捨選択能力が低い人の不幸を加速させている側面もあるように思います。情報がオープンになり、その情報をうまく活用して得をしている人がSNSの活動で可視化されてしまうようになりました。SNSの中ではどうしてもうまくいっている人の声が大きく見えてしまい、煽られていると感じてしまうという側面はあるのではないでしょうか。
ちなみにSNS時代の就職活動を描いた「何者」は2012年に描かれた本ですが未だに通じる部分があると思われます。
これからの話、情報が十分にオープンになったことで取捨選択の手助けをするサービスが本格化してきた
一方で近年では情報が十分にオープンになったことで、溢れる情報の取捨選択に対する「負」が表面化してきたからか、情報の取捨選択をサポートするサービスが増えてきたように思います。
僕自身もお会いしたことのある矢本さんが提供するタベリーは献立を10秒で作ることができるアプリです。
これまではレシピサイトといえばクックパッドで、クックパッドの大量にあるレシピから主体的に検索することが求められていました。溢れる情報の中から冷蔵庫にあり、自分が作ることができて、いま食べたいものを選択するのは結構な労力がかかってしまい、そこを解決してくれるアプリだと言えます。
先月末にリリースが出て、話題になった「ズボラ旅」も情報の取捨選択を助けるサービスと言えます。
旅行についても大量にある候補から、予算内におさまる宿を探して、意思決定するのはなかなか労力がかかるものです。
就活や転職などにおいても十分に情報がオープン化されてきたため、溢れる情報から取捨選択する負が高まっており、この部分を解決するサービスが今後トレンドとなりそうだと思っています。
これまでのインターネットは情報をオープンにするビジネスモデルが主体で、実際に多くの産業でその方向でビジネスが立ち上がったように思います。そして情報が十分にオープンになったことで、情報の取捨選択が結構面倒であり、能力のある人しか報われないことが周知された結果、このような情報の取捨選択をサポートするサービスが生まれてきました。なのでこれからのインターネットサービスの多くは、情報強者だけでなく、これまでインターネットサービスで報われることのなかった人にも優しいものになるのではないかと考えています。
一つのサービスで全ての課題を解決することはできない
自ら起業してサービスを作って提供した経験からすると、自分自身のサービスで全ての人の悩みを解決して幸せにするのは到底ムリで、それを目指そうとするのは驕りなんじゃないかなと思っています。上記で紹介したブログでも書いた通り、「一つのサービスやプロダクトが全ての課題を解決することはできません。結局、時代が変われば人々が直面する悩みや課題が変わるので、それを解決するサービスを生み出す起業家のニーズはいつまでもなくなりません。」と考えています。
社会やサービスに対する不満や議論はたくさんあるべきだと思っている一方で個人としては、議論から世の中の負や課題を抽出して解決するサービスや事業はなんだろうと考え続けていきたいと思います。