ゼロイチ起業ノート

スタートアップ、スモールビジネスを問わずにゼロイチ起業に挑戦、成功する人を増やすことで日本において起業という選択肢を当たり前にすることが究極的な目標です。

AbemaTVとクラシルから考えるビジネスの最先端を切り開くということ

サイバーエージェントのAbemaTVは最近何かと話題になることが多いサービスで、個人的に藤田社長は尊敬している経営者の一人であるため注目しています。

一方でAbemaTVに対しては2016年度で100億円の赤字、2017年度で200億円の赤字と大規模な先行投資を行うことに対して懐疑的な見方も少なくありません。2ちゃんねるの創設者のひろゆき氏はテレビ番組でAbemaTVが構造的に失敗すると話しています。

netgeek.biz

今回は最近盛り上がりを見せる動画Webサービスとそれに対する評論から感じたこと、考えたことをつらつらと書きたいと思います。

AbemaTVを展開する藤田社長のひろゆき氏への反論

ひろゆき氏がAbemaTVが失敗すると考えたのは、「サーバーは設備投資であり、一度投資してしまうとその後ずっとコストがかかり続けるためコスト的に継続が難しい」ということのようです。

これに対してはTwitterで藤田社長が下記のように反論しています。

昔はネットサービスを運営するにもサーバーを自宅に設置して運用していたために、サーバー費用がコストとして非常に重いものだったようです。Pixivの創業者である片桐氏はサーバーの費用に関して下記のように語っています。

2007年9月にpixivができて、すぐに人気になってしまったのでサーバーが必要で。でも、サーバーを買う金がない。銀行からお金も借りれないし、ベンチャーキャピタルも時間がかかりそうだし、どうしよっかなぁと思ったんですね。
そのときにネットを見てたら、Googleの初期サーバーが載っていたんです。それがもう、ベニヤの上にパソコンの部品を乗せてただけだったんですよ。これだったら、1台4万円くらいでできるなと思って。
でも、4万円もない。しかも必要なのは、10〜20台なので、4万円といっても、50万円くらい必要だったんです。それがないと、pixivを運営できない。
考えた末に、消費者金融を4社回って、200万くらいゲットしました。VCも銀行も時間がかかるじゃないですか。消費者金融はその日中なんで、現金を持ってそのままアキバへ行って、部品を買って。そして、サーバーを作ったんですよ。そして、消費者金融からの催促は無視する(笑)。これで半年間持ち堪えました。

logmi.jp

わずか10年前はサーバーを自前で準備する必要があり、アクセスが集中すればサーバーを増やして設備投資をして対応する必要がありました。またクラウドでのサーバーの維持費用はかなり安くなっています。

僕が素人ながら運営していた時代のUnistyle株式会社では、月額4000円弱のさくらVPSの4Gでピーク時の月間PV300万弱、年間登録者数3万人弱をさばいていました。そのため年間の売上に占めるサーバー費用は無視してもいいレベルでした。

現在はAWSであれば、サーバーを増やすのもクラウド上で少し操作するだけで可能になります。ビジネスの前提がどんどん変化しており、すぐに一昔前の常識が陳腐化するのがネット業界の面白いところであり、大変なとこだなと思います。

僕自身もクラシルのビジネスモデルに関して下記のようにコメントしましたが、delyの堀江さんによると実際には動画原価のコストはそこまで高くないようです。

ビジネスモデル的にはクックパッドというよりも、gunosyが近いのかなと勝手に思っており、他社の媒体を収集すればgunosyに比べると料理動画を内製する必要があるため、原価が高くなるので営業利益率はちょっと低めにでるのでは?と勝手に思ってます。

blog.zerotoone.jp

クラウド上で動画を提供するサービスが盛り上がり始めたのはここ数年であり、どの程度のアクセスまで耐えられるのか、どの程度のコストがかかるのかなど、最先端の知識というのはまだまだ共有されていません。このビジネスモデルが成功するかはわからない状況ですが、切り開いている当事者の彼らにしか見えてない景色が存在するんだろうなと思います。

 

ネットサービスがテレビCMをする時代を切り開いたのはグリー

今では資金調達した資金の当然の投下先としてテレビCMは当たり前の選択肢となりましたが、その時代を切り開いたのは個人的にはグリーだと思っていて、2008年5月にニュースリリースで初のTV CMを全国放映開始することを伝えています。

corp.gree.net

そこからDeNAも参入し、2010年には日経新聞でテレビCMに想定外の新顔が現れたとして、グリーとDeNAが花王やサントリーに匹敵する広告主として登場したことを驚きを持って伝えています。当時はリーマン・ショック後でもともとテレビ露出が盛んだったトヨタ、サントリー、花王などの広告主が広告費を絞る中で、非常に安い価格で広告出稿が可能だったという追い風もあり、広告効果は非常に高かったそうです。

www.nikkei.com

グリーやDeNAの成功体験もあり、当時から比べると広告出稿の価格は上がっているとかんがえられるものの、今ではネットサービスをテレビCMで宣伝することはマス層を安価に獲得する方法として認知されています。積極的にテレビCMを展開をしているグノシーはテレビCM効果もあり、アプリダウンロードのCPA(顧客獲得単価)が200円程度です。

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画像出典:Gunosy 2017年度第三四半期決算説明資料より

 

後から考えるといくらでも、「テレビCMはマス層にリーチするのに最適な手段で〜」とか「テレビCMによるCPAは実はリスティングより安いケースが〜」などなど後付でいくらでも言うことができるのですが、それもグリーがビジネスの最先端を切り開く行動をしたからこそだといえます。

前述のAbemaTVとクラシルの例を見ていても、今後のスタンダートになるようなビジネス・施策に関わり、最先端を切り開いていくのは苦しいながらも、経営者・ビジネスマンとしては非常に面白いこと、幸せなことだろうなと思います。

最後に

僕自身は行動することが全てで評論家はダメだとも思いません。実際にひろゆき氏がAbemaTVについて語ってくれたからこそ、いやいや実際はこうなんですよと、当事者である藤田さんからの発言が得られて社会的に認識が広まった結果となったと思っています。個人的にはビジネスの話は趣味であり、こういったやり取りには知的好奇心が刺激されるので、非常にありがたいし今後も活発に評論家と当事者が適切にコミュニケーションしてほしいと思います。

一方でそれでも僕としてはビジネスに関わるのであれば、当事者として小さな領域でもよいので切り開く側にいたい気持ちが強いです。このネット動画領域については僕自身は評論家になってしまいがちですが、今後もビジネスの行方を楽しく見守りたいと思います。

スタートアップ社長の給料の現実と海外の事例

先日SNS経由でこの記事を読みました。

kenshinfujiwara.com

非常に整理されており勉強になったとともに、僕ら自身が起業した当初も役員報酬で苦労した経験があったので、思い出とともに調べたことを整理したいと思います。

スタートアップの社長の給料は調達前20〜30万円、調達後は50〜100万円

上記のブログにも書いてある通り、スタートアップの社長の給料は調達前で20〜30万円、調達後は50〜100万円と言われています。nanapiのけんすうさんもブログで同様のことを書いています。

いきなり結論を書いてしまうと「20万〜30万」じゃないかと思います。都内では、30万あれば、だいたい快適に暮らせます。20万でも全然快適だと思いますが、社長とか役員になると、外との交流も必要なので、余裕を持って30万というのがいいんじゃないかと。
うちの会社でも、他の会社でもこのあたりが多かったので、そうかなあ、と。

(中略)

もちろんこれは初期の話で、資金調達を億単位でするようになると、もう少し増やすケースが多いです。50万〜100万くらいにするケースが多いのかな?

thefirstpenguin.jp

ユーザベース、NewsPicksの創業者梅田さんもコメントで下記のようにコメントしています。

うちの場合は創業から下記のような感じです。重要なのは役員も含めて給与をオープンにして会社の成長と各自の報酬を含めた成長が連動する。すなわち「Growth Together」を会社の仕組みとして明確にする事の方が大切。
2008年〜2009年:10万円-20万円
2010年〜2012年:30万円
2013年〜2014年:108万円

newspicks.com

 

会計ソフトfreeeを提供するFreee株式会社の佐々木さんはもっと尖っており、1〜2年目までは給料が5万円だったようです。

佐々木 すごいもらってました。楽だし(笑)。すごいぬるい人生送ってたんですけど。でも、僕は起業したときは、最初1〜2年目の自分の給料は5万円。
小野 月5万円ですか? 熱いですね! お小遣いじゃないですよね?(笑)。
佐々木 役員報酬は、1年間変えちゃいけないんですよ。だから、もう5万円と書いて。それはもう、年金事務所に行って「すいません。保険料一番安くしたいんですけど、いくらがいいですかね?」と言ったら、「5万円がいいんじゃないですか」と言われて。

logmi.jp

駐車場のシェアリングサービスを提供するakippaでは18万5千円、社員番号5番目の副社長が20万円からスタートしたようです。

金谷 うちの場合は、前職がもともとみんな低いところを流れた人間なので、入ったときは18万5000円とかです。
副社長が社員ナンバー5番で、今、人事やってるんですけど。だいたい20万ぐらいですかね。それで、だんだん昇給していくというか、成果に合わせて上がっていくというかたちです。今はたぶん、けっこうもらってると思います。

logmi.jp

ファッションコーディネートアプリを提供するVASILYはノリで決めて25万円だったそうです。

金山 僕ら、創業のときは2人とも25万。
小野 25万!?
金山 ノリで決めてました。当時30歳で結婚もしてましたけど、もう25万と。

logmi.jp

先日のブログでも書いた中小企業庁が発表している資料にも、起業3年後の社長の給料について言及がありますが、月額20万円以下が約40%、月額40万円以下で約65%と上記の調達前の給料に近い水準となっています。

blog.zerotoone.jp

 

調達後に給料を上げる理由

調達後に給料を上げる理由について、両ブログで書かれていたことをまとめると以下のようになります。

社長のモチベーション・体調維持

資金を提供したVCにとって一番のリスクは投資先のスタートアップの社長が戦意を喪失して事業を投げ出してしまうことです。多くのスタートアップは事業アイディアの多くを社長に依存しており、その社長が抜けてしまうことはそのスタートアップが潰れてしまうことと同義であることが少なくないからです。

モチベーション維持に影響のあるものとして、社長自身が他の会社に転職すればもっと稼げてしまう、自分より給料をもらっている社員がたくさんいる、安いものばかり食べていると精神衛生上も体調管理上もよくないなどが挙げられています。

株の買い戻しイベントに備える

冒頭で紹介したブログでは株の買い戻しイベントに備えて社長にそれなりの資金力を備えさせるべきとありました。この点に関しては個人的には、①そもそも社長の手取りを100万円にしたぐらいだと、社員の離脱時に買い戻しはできてもVCからの買い戻しはきついこと、②株主間契約などで予め縛ることができそうの2点疑問が残ります。

①については簡単な計算でわかるのですが、ざっくりスタートアップの資金調達では、会社の価値を3億円と算定して、その10%をVCに渡すので、3000万円を会社に入れてくださいって感じになります。VCもステージに応じて投資した額に対するリターンは変わるのですが、買い戻しをするとなれば、当初の3億円3000万円という金額では買い戻しをさせてくれません。半分買い戻すとしても1500万円以上が必要になります。なのでいくら社長の給料をあげたところで結構厳しいんじゃないかなーというのが気になります。もちろんある程度給与があれば銀行借入ができるというのは言えるかもしれません。実際に知り合いの経営者で結構な金額の銀行借入を行い、株の買い戻しを行ったという話を聞きます。

②については共同創業者や社員に株を渡す際には株主間契約である程度縛りを入れることができます。近年では「1 year cliff, 4 year vesting」というスケジュールが一般的なようです。

その一定期間(=スケジュール)が、典型的には「1 year cliff, 4 year vesting」といわれるものでして、これは、

 (1) 1年間働いたら、全体の4分の1が、会社の買戻権から外れる(=その後会社を去っても、会社から買い戻されることはなくなる)

 (2) 1年間後は、1ヶ月経つごとに、全体の48分の1が会社の買戻権から外れる。

 (3) 最終的に、満4年で、全部が会社の買戻権から外れる(晴れて、完全無欠の株主になる)。

ということを意味しています。

 

www.bizlawinfo.jp

このような形で株の買い戻しについては、そもそものバリエーション的に社長の給料をあげても対処が難しく、対処するのであれば創業者間契約で縛るのがよいと思うのであまり給与には影響しないのかなーと個人的には思っています。

 

海外のスタートアップCEOの給料水準

海外のスタートアップCEOも同様な傾向にあるといえます。下記は調達額に応じたスタートアップ創業者の給与の平均を表したものです。日本と似たような環境にあるといえますが、上記で紹介したブログよりも調達金額に応じた金額が出ており参考になります。調達したから50万円-100万円というよりは、調達金額に応じて適切な給与を考えましょうという形になっています。このグラフを見る限りは1億円以上調達するまでは、月額30万円の年収360万円というのがスタートアップ社長の平均的な給与水準になりそうです。

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画像出典:

thenextweb.com

上記の記事では、資金調達金額ごと以外にも製品の開発段階ごとや各都市ごとのスタートアップ創業者の給料のグラフがあるので興味がある人はぜひ見てみてください。

 

資金調達しないまま売却した僕らのケース

最後に思い出話をすると、創業1年目は、役員報酬には結構苦労しました。そもそもいくら儲かるのかわからないのに、役員報酬は一度決めると変更が極めて面倒なものです。

僕らの場合初年度は最初はセオリー通り月額30万円の予定で進めていたものの、(どうやら初月の調子がよかったので調子にのって40万円で設定したものの)思った以上に進捗が悪く、期中で月額10万円に減額することを決めて手続きを取りました。共同創業者の指摘で気づきましたが、30万円じゃなくて40万円だったんですね。。。

しかし役員報酬については減額でも原則的には認められていません。

役員報酬を事業年度の途中で減額したい場合、国税庁では「経営状況の悪化に伴なって、株主や債権者、取引先等との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じている場合」は特別に減額し、損金に算入することができるとしています。
しかし、事業年度の途中での役員報酬の変更は、減額であっても原則は認められてはいません。

subaru-juku.com

このままだと会社経営的にまずそうなので上記の「経営状況の悪化に伴なって、株主や債権者、取引先等との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じている場合」に該当するとして、役員報酬を減額したことがあります。ちなみに役員報酬の増額はできますが、増額分は全て損金不算入です。今年は思った以上に儲かりそうだから役員報酬を増額して税金の支払いを少なくしようみたいなことはできない仕組みになっています。

2年目以後は事業年度開始後、3ヶ月以内に役員報酬の変更を行うことができるというルールに則り、事業年度開始3ヶ月の初速を見て、どの程度の売上になりそうなのかを予測し役員報酬を決定していました。

4年目からはだいぶ安定して利益がかなり出るようになったのでざっくり決めるようになりましたが、3年目ぐらいまでは最初の3ヶ月の動きを見て、かなり慎重に役員報酬を決定していたのが懐かしいです。

会社経営をしていると、銀行残高的に自分たちに給料が払えないなんてケースは少なくありません。その場合は会社に経営者が貸付を行い、未払金として計上します。nanapiのけんすうさんでもそんなことがあったのかと思うと当時を思い出して感慨深いです。

うちの会社でも、他の会社でもこのあたりが多かったので、そうかなあ、と。ちなみに払えない時は、払っていませんでした。会社への貸付という形になります。儲かったら返してもらえばいいわけです。

thefirstpenguin.jp

最後に

インターネット系のスタートアップはほとんどが人件費で消えていきます。そのため役員報酬をいくらにするのかは非常に重要な判断になります。少なすぎれば生活していけず、かといって多すぎると会社が成功する前に潰れてしまうという悩ましい問題です。役員報酬だけでなくスタートアップで起きる問題についてはセオリーはありながらも実際には自分たちの状況に応じて、自分なりに仮説立てて、最後はえいやで設定するしかないんでしょうね。

年間の起業件数は5万社、資金調達は1000社など起業にまつわる数字の話

先日、日本の未上場のベンチャー企業の2016年の資金調達額が2000億円を突破し、2006年度以後で最高額となったというニュースがありました。

jp.techcrunch.com

今回は、そもそも年間の起業件数やその中で資金調達できる企業数など、起業にまつわる数字について個人的なメモとしてまとめようと思いブログ書きました。全体像をつかむための参考にしてもらえればと思います。

 

年間起業件数は約5万社

中小企業庁のデータによると年間の起業件数は約20万件(下記PDFのP182起業の担い手より)、そのうち会社化したものが24%(下記PDFのP199起業の形態より)とのことなので、年間の法人の起業件数は5万社と考えられます。

http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H26/PDF/07Hakusyo_part3_chap2_web.pdf

なお、起業3年後の経営者の手取り収入は月額40万円以下で半数以上と若干厳し目の状況が伺えます。もちろん会社経費での飲食など節税をしているものと思われますが。

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ベンチャーの年間の資金調達件数は約1000社

日本の未公開ベンチャーの資金調達件数は大体1000社程度で推移しています。

以下の記事によると、ベンチャーの資金調達は、3年ぶりに1000件を割り込み、979件となったようです。

jp.techcrunch.com

 

ベンチャー白書2016のベンチャー投資実行の国際比較を見ると、件数・金額ともにアメリカがダントツに多いものの、中国が件数・金額ともに急成長していることが伺えます。そのような中で日本は安定的に1000件前後のベンチャー投資が行われているようです。

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画像出典元:ベンチャー白書2016(http://www.vec.or.jp/wordpress/wp-content/files/2016_VECYEARBOOK_JP_VNEWS_09.pdf

 

前述の年間の起業件数が5万件とすると、その中でも2%の起業しかベンチャーキャピタルから投資を受けることはできません。ベンチャーキャピタルから投資を受けるというのは起業した中でも一握りの存在といえます。

 

M&Aの件数は2000件程度で推移

ベンチャー投資に対して、近年はM&Aの件数は2000件弱程度で推移しているようです。

 

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 画像出典:グラフで見るM&A | M&A情報・データサイト MARR Online(マールオンライン)

 

社数ベースではベンチャー投資よりも多いのですが、M&A件数の多くはベンチャー企業の買収というよりも後継者不足からくる事業継承を含めたM&Aが多いようなので注意が必要です。以下は日本M&Aセンターが四半期で制約した譲渡起業の事業内容になります。

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画像出典:日本M&AセンターIR資料

https://www.nihon-ma.co.jp/ir/pdf/160428_presentation.pdf

 

一方でIT関連のベンチャー企業に対するM&Aの出口も確実に広がっており、起業後にM&Aという選択肢が見えてきたようにも思います。

blog.zerotoone.jp

blog.zerotoone.jp

 

新規上場(IPO)の社数は100件いかない程度

 

新規に株式を公開して上場する企業は2016年84件、2015年95件、2014年78件と100件に満たない数字で推移しています。年間の起業件数が5万社と考えると、0.2%未満の会社しか上場することができません。

 

最後に

以上、メモ的に起業にまつまる数字をまとめてみました。起業に関して全体像が見えると自分がどの立ち位置なのか、資金調達、M&Aや上場など目標としていることは現実的なのかなどが見えてくるので一度整理してみるのもよいと思います。

 

GameWith上場から考える狙い目のメディア領域の見つけ方

5月30日にゲーム攻略記事サイトのGameWithが上場承認されました。

www.itmedia.co.jp

2013年9月のオープンからわずか3年半で上場と、とんでもないスピードで成長しています。今回は前々から考えていたメディア領域での狙い目の新規領域の見つけ方について、GameWithの上場に合わせて整理したいと思います。なお狙い目の新規領域とはいってもこのGameWithのように上場する規模まで狙えるという意味ではなく、あくまで需要はあるけど供給が遅れているので事業化のチャンスがあるって意味で捉えてもらえればと思います。

 

なおブログから起業までについてはここでも詳しく書いたのでぜひ読んで下さい。

blog.zerotoone.jp

 

 

月間PV8.9億、売上10億、営業利益4億の高収益企業

GameWithの直近の数値が明らかになっていますが、かなりの高収益企業です。直近の第4期は3Qまでの数字ですが、売上10億円、営業利益4億円となっています。月間PVは8.9億、月間ユーザー数は4176万人、1ユーザーが月間20PV以上とかなり粘着性の高いメディアであることが伺えます。

売上10億円のうち、5億円がいわゆるgoogleアドセンスでの収益であり、コードを取得して貼っておくだけでOKという手離れがかなりいい収益となっています。タイアップ記事などもあるようですが、アドセンスの収益が半分以上となっており、積極的に営業する必要のないビジネスモデルがゆえの高収益と推測されます。

なお、この領域ではgunosyが買収したゲームエイトや、ナイルの運営するappliv、Appbankがありますが、GameWithはその中でも一歩抜き出た実績になっていそうです。ちなみにゲームエイトは2016年夏時点で月間1億PV、applivは2015年4月と古い数字ですが、月間ユーザー数600万人突破とのことです。GameWithの月間PV8.9億、月間ユーザー数4176万人の数字の凄さが改めてわかります。

 

ゲーム攻略wikiは儲かるとネット上では話題だった

2ちゃんねるなどを中心に、ゲームの攻略wikiの管理人がやり方を披露するのがはやった時期がありました。

kasegeru.blog.jp

このようにゲーム攻略のwikiは儲かると個人間では話題になっており、実際に高い利益をあげた個人もいたようです。このゲーム攻略wikiとGameWithのビジネスモデルは基本的には同じモデルとなっています。個人が副業的に取り組んでいたゲーム攻略wikiを真面目に事業として取り組むとここまでの規模の事業に成長することをGameWithは示しています。

 

ゲーム攻略wikiから考える狙い目のメディア領域の見つけ方

結論から言ってしまえば、「法人があまり参加しておらず、個人のメディアで情報提供されている領域」が狙い目となります。この領域はユーザーの情報に対するニーズはあるものの、事業として供給がないために個人がブログやSNSで情報提供している領域になります。

このような個人がブログなどでマネタイズしている領域に対して、個人のメディア以上に高いクオリティもしくは差別化された価値を提供することで、事業化を狙うという戦略になります。

近年ではブログ、note、オンラインサロンなど様々な方法で個人がマネタイズすることが可能となっており、事業として魅力的かどうかもなんとなく推測できるようになっているように思います。

僕らが創業した就職活動の情報メディアも当時はあまりなく、就職情報をブログで収集するのが特に高学歴学生の間では流行していました。そのためいくつかのブログを見た上で自分でもブログを行い、いけそうだと判断したタイミングで起業することに決めました。

blog.zerotoone.jp

ちなみにこの領域で個人の領域を殴り込みに行く上では、当然、その個人が提供しているものよりも高い価値を提供する必要があります。なんか儲かるらしいから真似してメディア化してみよーって考えだと、個人のブログに瞬殺されます。現在は誰でも発信できる時代であり、専門家や専門家ではないが知識レベルは同等といった人がブログやSNSで発信している時代です。メディア事業をやるのであれば上記の過去ブログの通り、まずは自分自身でブログなりSNSで情報発信を行い、ある程度の仮説検証を終えた上でやると調達せずとも安全に事業化することができるかと思います。

 

僕が狙い目だと思って検討したメディア領域

「法人があまり参加しておらず、個人のメディアで情報提供されている領域」という観点で僕が参入を検討したメディア領域について紹介します。以下の領域は全て検討したものの、僕自身の知識不足やモチベーション不足で事業化してまで参入に至らなかった領域になります。

①投資・金融関連のメディア

実はUnistyle株式会社を設立する前の社会人時代には、就職活動情報を提供するブログと並行して、投資・金融関連のブログも運営していました。もともと、FXや投資などが好きで、総合商社時代の所属も金融部門だったことから自然とこの領域での情報提供をしてみようと思いました。実際に僕自身も個人の投資ブログを参考にしたりしていたのでこの領域でメディアを提供するのはなんとなく面白いかもと思っていました。

しかし僕自身の知識不足からくる提供する情報に対する自信のなさなどから、徐々にモチベーションを失い、この領域ではやらないと判断しました。

金融系メディアでいえば、2013年に設立されたZUU onlineが事業化に成功しています。現在のところ、金融関連でここまで大規模に情報提供できているメディアはZUU onlineのみではないでしょうか。

zuuonline.com

 

②首都圏の居住用マンション関連メディア

最近僕自身もマンションを購入したこと、もともと不動産には興味を持っていたことからこの領域も参入を考えたことがあります。この分野も個人の情報提供が進んでおり、僕もTwitterでフォローしている「のらえもん」さんはブログやTwitterでの情報提供が実績となり書籍まで発売しています。 

専門家は絶対に教えてくれない!  本当に役立つマンション購入術 (廣済堂新書)

専門家は絶対に教えてくれない! 本当に役立つマンション購入術 (廣済堂新書)

 

 

この領域ではマンションノートがうまく事業化しているようです。最近はあまり話題を聞くことがないのですが、参入している法人も少なく、マンション口コミというCGMのネットワーク効果の効きやすい事業のため先行であるマンションノートに有利だと思っているのですが実際のところはどうなんでしょうか。

www.mansion-note.com

 

③スタートアップ関連の分析系メディア

この分野は時々、noteなどを買って読んでいる梅木雄平さんが個人としてポジションを確立しています。THE BRIDGEやTechCrunchはニュースサイトという位置づけで、更に一段深く掘り下げた情報を提供するスタートアップ関連のメディアはちょっと思いつきません。

僕自身のブログもこのポジショニングを狙おうかどうしようかってのは50記事書いた上で考えようと思っています。今のところは個人としてメディア運営もできるという、メディア運営の再現性を証明すること、起業から事業売却までの思考をアウトプットで整理することを目的に行っています。

この領域での事業化はまだ思い当たらないので誰かやりたい方がいればぜひ取り組んでもらえればと思います。

 

最後に

だいぶ話が脱線してしまいましたが、個人がメディアパワーを気軽に持てる現代では、個人のブログやSNSに注目することで需給バランスの崩れた領域を探すことができると思っています。もちろんそのバランスが埋まるスピードが早くなっている、かつバランスの崩れた領域がどんどんニッチ化しているように感じます。ニッチな領域でも、ハゲに関する情報を提供するメディア「ハゲラボ」を運営していたゴロー株式会社が、10億円以上で買収されているように、狙い目の領域はまだまだあるように思います。

hagelabo.jp

これをきっかけにメディア立ち上げて成功する人が出てくればうれしいので参考にしてみてください。

 

起業初年度から黒字化するための事前のProduct Market Fitと顧客獲得戦略

僕自身は起業初年度から黒字化できるように計画を組むし、そのための事前準備に結構時間を取ります。起業初年度から黒字といっても、受託開発で食いつなぐなどの手段は取らずに最初からProduct Market Fitが検証できたプロダクトを持って起業して、そのプロダクトで初年度から黒字化を目指しています。  

ちなみにProduct-Market FitとはNetscapeを立ち上げて一時代を築いたMarc Andresenの言葉で下記のように定義されています。

”Product/market fit means being in a good market with a product that can satisfy that market.”

つまり、つまり、良い市場を狙っていて、且つ、その市場を満足させることができる製品を持っている

skillhub.jp

そのためプロトタイプは週末起業的に作成し、将来の見込み顧客の獲得も前職で給与を得ているうちに副業的にやってしまいます。最近ブログやTwitter頑張ってるのも次の起業につなげるためだったりするので、その戦略というか考えていることを伝えられればと思います。リスク小さく起業するためにやったことや考えていることについては下記にまとめているのでこちらも合わせてお読みください。

blog.zerotoone.jp

blog.zerotoone.jp

そもそも100%自己資金でやるので初年度から黒字じゃないと辛い

そもそも起業初年度から黒字にこだわるのは100%自己資金にこだわるからです。僕自身がサラリーマンを続けずに起業を選択する一番の理由は「自由に生きたいから」というものです。そのためVCや投資家から出資を受けるとその自由度がだいぶ少なくなるような気がしており敬遠しています。(そうではない事例も当然あるかと思いますがVCが入ることにより自由度が低くなるケースを何件か聞いているためです。)

VCからの資金調達に関して、グロービスの高宮さんが言っている「悪魔に体の一部を渡して、力を得る」という表現は的を得ていると思っていて、僕としては悪魔に魂を売り渡すことなく現状の力を徐々に伸ばして成功したいと思っています。

thebridge.jp

VCから調達せず、しかもそこまで多くない資本金で起業するために、初年度から黒字、すくなくとも数百万円の赤字で抑える必要があります。

  

Product-Market Fitは給料をもらっている時に副業的に進める

初年度から黒字化を達成するためには、このProduct Market Fitを起業前に達成して置く必要があります。Product Market Fitが達成できているかどうかを測るために必要なものは、①検証したい仮説、②仮説検証のためのプロトタイプ、③結果としてついてくるユーザーの3つが必要です。この3つを僕自身の経験に照らし合わせると以下のような形になります。

Unistyle株式会社を設立した時も、プロトタイプ作成を出社前後と土日に作業を進めていて、トータルでは1年間ぐらい起業の準備をしていました。起業する前の2010年ぐらいはまだ就職活動関連のWebメディアは一般的ではなく、就職活動においては絶対内定などの就活本を買うのが一般的でした。そのため本ではなくWebメディアであれば、無料だし、データは蓄積し放題だし、絶対にユーザーにとって便利でしょという①検証したい仮説がありました。

その②仮説検証のためのプロトタイプとして、当時はプログラミングスキルもなかったので、無料のブログおよびSNSのTwitterを使うことにしました。ちなみに現在もUnistyleに掲載されている記事の10%ぐらいはブログで書いていたものになります。

③結果としてついてくるユーザーについてはPVでも、副業的に会社勤めをしながら月間数万PV、アフィリエイトでも月間10万円達成していたため、ユーザーである就職活動生がかなり獲得できるだろうと考え、この分野で起業しても食べてはいけそうと判断しました。

これがUnistyle株式会社を設立する前に僕自身が行ってきたことです。これと同様の動きを次回の起業に向けてもやっており、現在は検証したい仮説が固まり、プロトタイプ作成段階です。

結構多くの起業家がProduct Market Fitを資金調達後にやっているように思いますが、個人的にはビビリなのでFitするかどうかわからないプロダクトを調達した人のお金でやるのは怖いという気持ちが強いです。

 

顧客獲得、特にC向けサービスならブログ+SNSでファンを作っておく

次に事前の顧客獲得戦略についてですが、事前にブログとSNSでファンを作っておくことが大事だと思っています。

個人のエンパワーメントの時代と言われていますが、スマートフォンおよびSNSの普及により普通の個人が巨大なメディアパワーを持てる時代になっています。芸能人でもないテレビにも出たことのない個人がtwitterやInstagramなどのSNSで数万のフォロワーがいることも珍しくない時代です。

Unistyle株式会社を設立する前も、ブログとtwitterでファンを増やすことに注力し、起業する時にはtwitterのフォロワーも数万単位でいるような状況にしていました。

現在の僕もTwitterに注力してフォロワーを増やそうとしていますが、これは次回の起業領域もHR関連でやろうと思っているのでその領域に興味のあるファンを作っておくことを念頭においています。起業しようと思い、その旨を会社側に伝えてから明らかにつぶやく分量が増えています。(純粋に楽しんでやってるというのもありますが笑)

ちなみに狙う領域や個々人の得意・不得意に応じてプラットフォームであるSNSは使い分けるのがよいと思っています。僕が狙う領域でInstagramやっても何の特にもならないし、僕個人としても写真で訴えるというのは得意ではないのでマーケティング用途としてはInstagramは使いません。一方で写真が重要なビジネスであればInstagramは欠かせないマーケティングツールでしょう。

僕個人としてはtwitterが性にも合うし、ビジネス領域としてもマッチしてると思うのですが、最近NewsPicks経由で記事がバズったこともあり注力しようかなーと思っています。

 

バーベル戦略で会社に勤めながら副業的に起業を狙う

個人的には名著『ブラック・スワン』に出てきたバーベル戦略という考え方はキャリアを考える上でも非常に役に立つと思っています。バーベル戦略とは下記のような考え方です。

ハイリスク・ハイリターンの資産とローリスク・ローリターンの資産など対照的な資産を組み合わせる投資手法。ナシーム・ニコラス・タレブ著『ブラック・スワン ? 不確実性とリスクの本質』では、ポートフォリオの85%〜90%を安全性の高い資産に投資し、残りの10%〜15%をリスクの高い投機的資産に投資する手法として紹介されている。

引用元:野村證券 | バーベル戦略(証券用語解説集)

キャリアに当てはめると、ローリスク・ローリターンである会社員を続けながら、週末や出勤前後の時間を使ってハイリスク・ハイリターンを生み出せる起業に時間をかけるという考え方です。詳しくは下記のブログを読んでもらえるとわかるかと思います。

medium.com

起業というとリスクが高いことと思い込んでる人も多いのですが、バーベル戦略的に人生の一部の時間をハイリスク・ハイリターンな部分に賭けるというやり方をすれば小さなリスクで、アップサイドも狙うことができます。

個人的にいま流行りのブログ飯などの個人事業主化はリスクの割にアップサイドが限定的なので、それを目指すぐらいならサラリーマンを続けながら、M&Aなどで一発で億万長者以上になれるプロダクトの開発を副業的に狙うのが好みです。

起業家のリスクのとり方についてはこんな書評を書いてるので合わせて読んで下さい。起業家は実はリスクを取るのが嫌いという常識に反する内容になっています。

blog.zerotoone.jp

 

最後に

長々と書きましたが、結論としては起業する前の給料を安定的にもらってる状態の時に、①検証したい仮説とプロトタイプを作ってしまいProduct Market Fitを達成しておきましょう、②将来の顧客になるファンをブログ・SNSを通じて作っておきましょうの2つに集約されます。ぜひあんまり起業を考えていない人もこのブログを読んで、ちょっと副業的にやってみるかと考えてもらえたらうれしいです。

 

スタートアップの従業員はストックオプションでいくら貰えるのか

先日、この記事が話題になっていました。

www.fastgrow.jp

非常に面白く読んだ一方で、知り合いでストックオプションもらっている人でもそこまでもらっている人は多くないと思っており、ちょっとスタートアップへの人材紹介業をやっているスローガンさんのポジショントークが強いかもと思って、僕も独自に調べてみました。

 

調査の方法

調査の方法とやり方は下記の通りです。

 

・2017年に上場したスタートアップ8社が調査対象

・調査対象の会社はFringe81、ネットマーケティング、ユーザーローカル、オロ、ビーグリー、うるる、ロコンド、シャノンの8社

・上場時の目論見書の株主の状況から取締役を除く従業員で、持ち株数が公表されている従業員全員が対象

・総株式数については実現していない新株予約権も実現したものとして算出、各従業員の保有株数についても同様

・従業員全員の持株比率、公募価格による持ち分の時価総額、5/23日の終値時点での持ち分の時価総額の平均値と中央値を算出(Fringe81については公募価格が発表されていないので想定価格で算出、時価についてはFringe81を算出から外している)

 

スタートアップの従業員のストックオプションの資産価値中央値は706万円

早速ですが結論として、公募価格時点でのスタートアップの従業員のストックオプションの資産価値の中央値は706万円、平均値で1873万円です。5/23日時点での時価で算出すると、公募価格からは値上がりしてる会社ばかりなので、中央値で871万円、平均値で3596万円です。

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持分比率の中央値は0.09%、平均値は0.22%です。

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冒頭でご紹介したブログとはだいぶ異なる結果となりましたが、実際にはベンチャーの従業員レベルだと1000万円に満たないストックオプションが一般的であるといえます。

 

従業員の序列トップ、会社全体でNo5ぐらいの資産価値の中央値は6230万円

一方で取締役を除く従業員の序列トップ、執行役員や部長の中でも上位のレベルであれば、IPOにより6000万円以上の資産価値を手にいれることができるようです。8社の取締役除く従業員のトップは持分比率の中央値で0.76%、平均値で1.39%という結果となりました。公募時点の資産価値の中央値は6230万円、平均値で1億2206万円となっいます。5/23日時点の時価での資産価値では中央値で7975万円、平均値でなんと2億6173万円となります。

取締役が大体4名程度いることを想定すると、会社のNo.5ぐらいのランクになると1億円の大台が見えてくるということが言えそうです。逆に言えばもしストックオプションで億万長者になりたいのであれば、その会社のNo.5になる必要があるといえます。

 

中央値で706万円のストックオプションは妥当?ストックオプションの考え方

従業員に対するストックオプションの考え方としては、①転職時に給与を下げてくれた差額に対する報酬という考え方と、②経営幹部として会社の成長にコミットした責任に対する報酬という2つの考え方がありそうです。以下はNewsPicksの梅田さんのコメントを抜粋しています。

SOは正解がないだけにスタートアップ経営者が共通して悩むテーマですね。やってみて初めて分かる事が多く、我々も反省点が多いところです。まず、SOを出す時にその目的が「リワード」なのか「ロイヤリティー」なのかをしっかり整理する事が大切だと思います。我々はIPO前にはほぼ全員にSOを入社時期とタイトルのマトリックス表に応じて傾斜配分しましたが、これは転職時に給与を低くして入社してきてくれたメンバーに対してその差額分を補填するための報酬(リワード)が目的でした。そのため、このSOによる会社へのロイヤリティーや報酬以上のコミットは期待せず、低い給与でここまで頑張ってくれて有難う、という一方的な感謝の形としてのSOとして位置づけにしました。そのため、独自の行使条件はつけず、自分の財産としていつでも好きな時に行使して良いよという設計にしました。一方、幹部メンバーの成果は会社の成長により直接的にリンクするので、会社へのロイヤリティー、コミットを高める事を目的としたSOを発行し、これは独自の行使条件をつけました。このタイプのSOは一般論として、最低限サラリーマンでは得られない報酬である事が大切であると思いますので、最終的に3億円〜5億円の報酬を得られる事が設計の一つの目安かと思っています。

出典:上場前ベンチャーでストックオプションをもらえば億万長者になれるのか?

 

多くのスタートアップの平均勤続年数が数年程度と短いことを考えると、従業員全体のストックオプションの中央値が706万円というのは、上記①の転職から給与が下がったことに対する補填としては、無事上場することができれば十分に機能しているといえます。

一方で多くの野心を持った大手企業の社員にとってはかなり物足りない金額と言えるかもしれません。 大企業から転身してストックオプションで億万長者という夢を見るのであれば前述の通り、役員になる気概が必要だといえます。

もちろんストックオプションはもらったものの、上場できない、M&Aではストックオプションを実現化させないなどの理由から実現するストックオプションはそもそもかなり少ないことには留意が必要でしょう。

最後に

僕自身にも大手企業からスタートアップへの転職について実際に検討している知り合いがかなり多くいます。リスクについては給与や生涯賃金という形で見えやすい一方でリターン部分については見えにくいと思い、このような形で調査しました。決断する際の材料の一つとしていただければと思います。

カネ目当てもOK、意識低い起業のススメ、『論語と算盤と私』を読んで

「起業」というと「壮大なビジョンを掲げて社会を変えるための斬新なアイディアをもとに仲間を集めて大規模な成功を目指す」といったイメージが強い人が多いように思います。実際にイベントや講演会、メディアに露出する目立つスタートアップ経営者の多くがビジョンを語り、大きな目標を掲げている傾向にあるように感じます。

一方で僕自身は下記のブログで書いたとおり、最初からM&A狙いであり、世界を変えるといった意識の高さはいまのところ持ち合わせていません。

blog.zerotoone.jp

 

そんな中、勝手に共感して尊敬している経営者の一人である元mixiの朝倉さんの「論語と算盤と私」を読み、「志低い起業のススメ」という章があったので自分なりに読みながら考えたことを書きたいと思います。 

ちなみにこの本は、マッキンゼーでのコンサルタント経験、自分たちで会社を立ち上げ、売却したスタートアップ経験、そしてmixiという上場企業での社長経験、エンジェル投資家としての経験が詰まったいい本だと思うので、起業したり大企業で社長になりたいなど経営を目指している人はぜひ読んでみてください。

論語と算盤と私―――これからの経営と悔いを残さない個人の生き方について

論語と算盤と私―――これからの経営と悔いを残さない個人の生き方について

 

 

息苦しい日本の起業に対するイメージ

本書でも触れられていますが、日本では事業売却や会社売却に対して極端にネガティブなイメージがついて回ります。 本書にも書かれていますが、

みながみな、ソニーやホンダを目指さなければならないような強迫観念にとらわれているように感じることがあります。

というのが日本の起業環境の実態ではないでしょうか。会社の売買なんて単なるマネーゲームだとして快く思わない人も少なくありません。

これは伝統的な大企業の周りだけでなく、スタートアップやVC界隈でも意識の高い起業が推奨されているように思います。特にVC周りの人にとってはビジネスモデルとして大きなリターンを得ることが重要なため、できるだけ目線高くホームランを打ってくれる起業家を好むように思います。

medium.com

発言力のあるスタートアップ創業者などはVCからの支援を受け、高い目線で起業したから大きな成功を収めることができたと考える人が多いため、スタートアップ周りでもやはり世界を変えることを目的とした「意識の高い起業」が主流であるように思います。

 

お金儲けがきっかけで起業してもいいでしょ

一方でアメリカシリコンバレーでもサラリーマンでは得られないような大金を求めて起業する起業家は少なくないようです。

アメリカのユニコーン企業の一つであるGustoの共同創業者も下記のTechCrunchの記事で、起業のきっかけについて創業者が受け取る莫大な金額のお金を聞いて、自分にも出来るかもと思ったことだと答えています。

「2007年ってさ、数億円から十数億円でスタートアップ企業が買収されたというニュースがTechCrunchに飛び交うようになった時期なんだだよね。希薄化とか持分とかって話もあるけど、それでも創業者が手にするお金って数億円でしょ? 23歳にしてみたら、それって聞いたことのない大金だった。だから、そういうのを見て、ぼくも『Why not me?』って思ったんだよね」(エドワード・キム氏) 

jp.techcrunch.com

冒頭で紹介した「論語と算盤と私」によると、アメリカでは「IPOを目指します!」 という起業家は少なく、最初からM&Aでの買収狙いの起業家が多いようです。日本に比べてもIPOはハードルが高い一方で、M&Aの機会は多く、IPOでのホームランを狙うよりも地に足の着いたM&Aを狙うケースが多いとのことです。

このように起業する際にも地に足の着いた出口が見えている状態であれば、「起業はギャンブル」という状況ではなくなり、適切にリスクコントロールすれば選択肢の一つとして面白いものになります。そして下記のブログで書きましたが、個人的には日本の環境は起業するのにかなり恵まれた環境であると思っています。

blog.zerotoone.jp

もちろん本来価値のないものを価値があるように見せて、高値で販売するような人を騙すビジネスは絶対にダメですが、サラリーマンでは得られない大金を若いうちに手に入れたいという動機で起業を志すのは自然なことだと思います。結局、医学部の偏差値が高いのもリスクが低く、金銭的に報われる可能性が極めて高いという経済的な理由であると個人的に考えています。起業についても経済的に報われる道が見えているのであれば自然と数も増えるのではないでしょうか。

 

1億円の金融資産があるだけで取れるリスクの量は増える

VC含むスタートアップ界隈では、数億円規模のExitはしょぼすぎて、そんな小さなExitではなくもっと大きな夢を見るべきだという風潮が強いように思います。一方で創業者の立場からすれば、数億円のExitで1億円前後の資産を手に入れることができるだけで取れるリスクの量はかなり増えます。1回失敗してもダメージとしてはなんてことないので、また起業に向かい、シリアルアントレプレナーとなる人も多いでしょう。先述の通り、米国では日本に比べてM&Aの件数が5倍ほどと多く、起業の出口として一般的です。そのため一度起業してバイアウトした起業家が再度、起業するというのが一般的だと聞きます。

 

参考:米国のM&A件数と金額の推移

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今、最も世界規模で成功しそうなスタートアップであるメルカリも、創業者の山田さんを始め、経営陣の多くが元起業家です。元起業家が再度起業するメリットとして起業のやり方がわかっているだけでなく、M&Aなどでキャッシュインしてれば取れるリスクの量が大きくなり、より大きなチャレンジができるように思います。

www.mercari.com

起業という選択肢が一般的になり、その中の何割かが売却して創業者としては大きなリターンを得る、その上でこれまでは取れなかったリスクを取り、大きな事業にチャレンジするというサイクルが生まれてくると、メルカリのような世界規模で成功するベンチャーが増えるのかもなと思っています。

僕自身も次の起業もM&A狙いでやろうと思っていますが、その後についてはまだ考えているところです。世界規模のスタートアップを作るというのも有力な選択肢の一つかもなと漠然と考えています。

 

最後に

冒頭で「日本における起業の息苦しさ」について説明したとおり、日本では「起業=崇高な理念の達成(お金は目的じゃない)」というのが、大企業や一般の人だけでなく、起業を推奨するはずのスタートアップ・VC界隈にも強くあるように思います。一方で米国ではM&Aの出口が日本よりも広いため、最初からM&A狙い(お金目的)で起業する起業家も少なくないといいます。だからこそ日本に比べて起業が多く、優秀な人ほど起業するのかもしれません。

僕個人としては、起業する人が増えて日本の経済が活性化するといったマクロの視点では特に物事を考えていませんが、純粋に一人のバイアウトを経験した人間として 起業という選択肢が持つ「美味しさ」を多くの人に伝えられればと思っています。