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ゼロイチ起業ノート

スタートアップ、スモールビジネスを問わずにゼロイチ起業に挑戦、成功する人を増やすことで日本において起業という選択肢を当たり前にすることが究極的な目標です。

クラシルとクックパッドにみる大企業がスタートアップを簡単には潰せない理由

少し前にレシピ動画サービス「kurashiru[クラシル]」を運営するdelyが総額30億円の資金調達をしたことで話題になりました。

 

jp.techcrunch.com

 

delyについては、中の人とはまったく面識がありませんが、我々がシャレー渋谷にオフィスを構えていた時に彼らも同じビルにいたことから勝手に親近感を感じています。今回はクラシルとクックパッドを題材に、常々考えていた「大企業がスタートアップを簡単には潰せない」説について考えを深めたいと思ってブログ書きました。

 

大企業が参入すればスタートアップを簡単に潰せると思う人は多い

特に大企業側の人に多いのですが僕の周りの人でも、豊富なキャッシュを持つ大企業が新しく立ち上がった市場に参入すれば簡単にスタートアップを潰せると考えている人は少なくありません。

一方でタイトルの通り、僕はそこまで簡単にはいかないと考えています。歴史的にも2010年当時、既に7000万人以上の会員と豊富なキャッシュがあった楽天クックパッドを潰すべく楽天レシピを立ち上げましたが、結果は歴史が証明しているとおり惨敗しています。当時は、企業規模として圧倒的に大きい楽天がレシピ領域に参入すれば、十分にクックパッドを抜けると騒がれていました。

ちなみに2010年度の売上は楽天が3460億円、クックパッドが32億円と100倍の差がありました。それでもクックパッド楽天に潰されることなく、料理レシピ領域では圧倒的No.1として成長を続けました。

「大企業がスタートアップ簡単に潰せない」問題について、僕なりに考えた理由をあげたいと思います。

 

理由1:キャッシュをそこまでつぎ込めないから

大企業というと資金が豊富にあり、新規事業にも湯水のようにキャッシュをつぎ込めると深く考えずに思い込んでしまっている人は少なくありません。ですが実際にはうまくいくのかわからない新規事業にそこまで資金を投下することはできず、対応が遅れることがままあるといえます。

具体的な数字で説明すると、クラシルは今回調達した30億円をすべて人員採用や広告費につぎ込むでしょうが、クックパッドは30億円の資金をレシピ動画の領域に簡単には突っ込めません。クックパッドも大きい会社ではありますが、2017年5月現在の現預金は170億円、2016年度の営業利益も50億円レベルです。そんな中で30億円を、伸びてるけど成功するかわからないレシピ動画市場に突っ込むにはかなり勇気のいる経営判断が必要になります。しかも30億円は攻めの投資というよりも、迫り来るクラシルを撃退するための守りの投資なので、余計に判断が難しくなると思っています。

判断が遅れる中、レシピ動画領域での差はどんどん広がります。既にクラシルの動画数とクックパッド料理動画の動画数にはかなり大きな差があり、クラシルはこのレシピ動画領域の一点に絞って資本を投下しノウハウもためるため、クックパッドがどうしようか考えている間にその差は広がる一方だといえます。

  動画数 更新数 / 日
クラシル 約6000 20本程度?
クックパッド 約1900 1~2本

*1

 

もちろん創業者の佐野さんが騒動を巻き起こしてでも返り咲いたクックパッドなので大胆な経営判断がされる可能性もありますが、なかなか大変だと思っています。

 

理由2:人材の量と質が劣るから

キャッシュだけでなく人材の量と質にも差が生まれると思っています。そもそも大企業には人は余っていません。優秀な人材は既存事業を成長するために頭も時間もいっぱいいっぱいに使って、前年対比120%以上の成長を求められています。1億円の売上を生み出すのも、0の状態から1億円を生み出すのはかなりしんどいですが、既存事業で100億円の売上があれば、1%成長させるだけで1億円の売上が生み出され、20%成長させれば120億円になります。大企業では後者の成長が重要であり、後者の成長を支えるために優秀な人材を採用し割り当てています。

そして奇跡的に優秀な人材を何名か割り当てたとしても、あくまでサラリーマンとして優秀な人材であり、新規事業を立ち上げたり、急速に成長させるためにゴリゴリ物事を進めるスタートアップに求められる優秀さがあるかはわかりません。クックパッドで言えば、どちらかというとゆったりとした従業員もサービスを愛してる「いい会社」というイメージが強く、その中で優秀と言われる人材が成長を半強制的に約束されたスタートアップとどこまでガチンコでやりあえるのかという点で疑問を持っています。

 

クラシルがうまくいくかは別問題でわかんない

クックパッドは簡単にはクラシルを潰すことはできないと思っていますが、クラシルが成功するかは別問題です。ビジネスモデル的にクックパッドが優れているのはSEOで広告費用を投下する必要がなく、ユーザーを獲得出来る点です。2016年度のクックパッドの広告宣伝費はわずか8000万円で、売上対比で約0.5%しかありません。そのためクックパッドは営業利益率がかなり高いモデルで50%を超えています。

一方でクラシルは動画のためSEOが効きにくいモデルで、ユーザーの獲得のためには広告に頼る必要があるように思います。ビジネスモデル的にはクックパッドというよりも、gunosyが近いのかなと勝手に思っており、他社の媒体を収集すればgunosyに比べると料理動画を内製する必要があるため、原価が高くなるので営業利益率はちょっと低めにでるのでは?と勝手に思ってます。ちなみにgunosyは広告宣伝費が売上対比約40%、営業利益率も12%程度となっています。

gunosyは上場ゴールでは?と言われたものの、CPAとLTVを緻密に計算ししっかりと伸ばしているように思います。クラシルでもCPAとLTVを最大化するための施策が大事になりそうだなーと思っています。

 

最後に

僕自身、商社から大手クレジットカード会社の新規事業系の部署に出向した経験と、現在M&Aで規模の大きな会社に買収されロックアップ期間で中にいる経験から、大企業とはいえリソースはパツパツで、新規事業に一気に注ぎ込むのは難しいなと実感してます。大企業とはいっても簡単にはスタートアップ潰せないと思ってるのですが、この2社の動向については今後も外野から楽しく見守りたいと思ってます。

*1:※2017年5月12日現在にサイトに掲載されてる動画数をページ数から算出