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ゼロイチ起業ノート

スタートアップ、スモールビジネスを問わずにゼロイチ起業に挑戦、成功する人を増やすことで日本において起業という選択肢を当たり前にすることが究極的な目標です。

スタートアップの従業員はストックオプションでいくら貰えるのか

先日、この記事が話題になっていました。

www.fastgrow.jp

非常に面白く読んだ一方で、知り合いでストックオプションもらっている人でもそこまでもらっている人は多くないと思っており、ちょっとスタートアップへの人材紹介業をやっているスローガンさんのポジショントークが強いかもと思って、僕も独自に調べてみました。

 

調査の方法

調査の方法とやり方は下記の通りです。

 

・2017年に上場したスタートアップ8社が調査対象

・調査対象の会社はFringe81、ネットマーケティング、ユーザーローカル、オロ、ビーグリー、うるる、ロコンド、シャノンの8社

・上場時の目論見書の株主の状況から取締役を除く従業員で、持ち株数が公表されている従業員全員が対象

・総株式数については実現していない新株予約権も実現したものとして算出、各従業員の保有株数についても同様

・従業員全員の持株比率、公募価格による持ち分の時価総額、5/23日の終値時点での持ち分の時価総額の平均値と中央値を算出(Fringe81については公募価格が発表されていないので想定価格で算出、時価についてはFringe81を算出から外している)

 

スタートアップの従業員のストックオプションの資産価値中央値は706万円

早速ですが結論として、公募価格時点でのスタートアップの従業員のストックオプションの資産価値の中央値は706万円、平均値で1873万円です。5/23日時点での時価で算出すると、公募価格からは値上がりしてる会社ばかりなので、中央値で871万円、平均値で3596万円です。

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持分比率の中央値は0.09%、平均値は0.22%です。

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冒頭でご紹介したブログとはだいぶ異なる結果となりましたが、実際にはベンチャーの従業員レベルだと1000万円に満たないストックオプションが一般的であるといえます。

 

従業員の序列トップ、会社全体でNo5ぐらいの資産価値の中央値は6230万円

一方で取締役を除く従業員の序列トップ、執行役員や部長の中でも上位のレベルであれば、IPOにより6000万円以上の資産価値を手にいれることができるようです。8社の取締役除く従業員のトップは持分比率の中央値で0.76%、平均値で1.39%という結果となりました。公募時点の資産価値の中央値は6230万円、平均値で1億2206万円となっいます。5/23日時点の時価での資産価値では中央値で7975万円、平均値でなんと2億6173万円となります。

取締役が大体4名程度いることを想定すると、会社のNo.5ぐらいのランクになると1億円の大台が見えてくるということが言えそうです。逆に言えばもしストックオプションで億万長者になりたいのであれば、その会社のNo.5になる必要があるといえます。

 

中央値で706万円のストックオプションは妥当?ストックオプションの考え方

従業員に対するストックオプションの考え方としては、①転職時に給与を下げてくれた差額に対する報酬という考え方と、②経営幹部として会社の成長にコミットした責任に対する報酬という2つの考え方がありそうです。以下はNewsPicksの梅田さんのコメントを抜粋しています。

SOは正解がないだけにスタートアップ経営者が共通して悩むテーマですね。やってみて初めて分かる事が多く、我々も反省点が多いところです。まず、SOを出す時にその目的が「リワード」なのか「ロイヤリティー」なのかをしっかり整理する事が大切だと思います。我々はIPO前にはほぼ全員にSOを入社時期とタイトルのマトリックス表に応じて傾斜配分しましたが、これは転職時に給与を低くして入社してきてくれたメンバーに対してその差額分を補填するための報酬(リワード)が目的でした。そのため、このSOによる会社へのロイヤリティーや報酬以上のコミットは期待せず、低い給与でここまで頑張ってくれて有難う、という一方的な感謝の形としてのSOとして位置づけにしました。そのため、独自の行使条件はつけず、自分の財産としていつでも好きな時に行使して良いよという設計にしました。一方、幹部メンバーの成果は会社の成長により直接的にリンクするので、会社へのロイヤリティー、コミットを高める事を目的としたSOを発行し、これは独自の行使条件をつけました。このタイプのSOは一般論として、最低限サラリーマンでは得られない報酬である事が大切であると思いますので、最終的に3億円〜5億円の報酬を得られる事が設計の一つの目安かと思っています。

出典:上場前ベンチャーでストックオプションをもらえば億万長者になれるのか?

 

多くのスタートアップの平均勤続年数が数年程度と短いことを考えると、従業員全体のストックオプションの中央値が706万円というのは、上記①の転職から給与が下がったことに対する補填としては、無事上場することができれば十分に機能しているといえます。

一方で多くの野心を持った大手企業の社員にとってはかなり物足りない金額と言えるかもしれません。 大企業から転身してストックオプションで億万長者という夢を見るのであれば前述の通り、役員になる気概が必要だといえます。

もちろんストックオプションはもらったものの、上場できない、M&Aではストックオプションを実現化させないなどの理由から実現するストックオプションはそもそもかなり少ないことには留意が必要でしょう。

最後に

僕自身にも大手企業からスタートアップへの転職について実際に検討している知り合いがかなり多くいます。リスクについては給与や生涯賃金という形で見えやすい一方でリターン部分については見えにくいと思い、このような形で調査しました。決断する際の材料の一つとしていただければと思います。

カネ目当てもOK、意識低い起業のススメ、『論語と算盤と私』を読んで

「起業」というと「壮大なビジョンを掲げて社会を変えるための斬新なアイディアをもとに仲間を集めて大規模な成功を目指す」といったイメージが強い人が多いように思います。実際にイベントや講演会、メディアに露出する目立つスタートアップ経営者の多くがビジョンを語り、大きな目標を掲げている傾向にあるように感じます。

一方で僕自身は下記のブログで書いたとおり、最初からM&A狙いであり、世界を変えるといった意識の高さはいまのところ持ち合わせていません。

blog.zerotoone.jp

 

そんな中、勝手に共感して尊敬している経営者の一人である元mixiの朝倉さんの「論語と算盤と私」を読み、「志低い起業のススメ」という章があったので自分なりに読みながら考えたことを書きたいと思います。 

ちなみにこの本は、マッキンゼーでのコンサルタント経験、自分たちで会社を立ち上げ、売却したスタートアップ経験、そしてmixiという上場企業での社長経験、エンジェル投資家としての経験が詰まったいい本だと思うので、起業したり大企業で社長になりたいなど経営を目指している人はぜひ読んでみてください。

論語と算盤と私―――これからの経営と悔いを残さない個人の生き方について

論語と算盤と私―――これからの経営と悔いを残さない個人の生き方について

 

 

息苦しい日本の起業に対するイメージ

本書でも触れられていますが、日本では事業売却や会社売却に対して極端にネガティブなイメージがついて回ります。 本書にも書かれていますが、

みながみな、ソニーやホンダを目指さなければならないような強迫観念にとらわれているように感じることがあります。

というのが日本の起業環境の実態ではないでしょうか。会社の売買なんて単なるマネーゲームだとして快く思わない人も少なくありません。

これは伝統的な大企業の周りだけでなく、スタートアップやVC界隈でも意識の高い起業が推奨されているように思います。特にVC周りの人にとってはビジネスモデルとして大きなリターンを得ることが重要なため、できるだけ目線高くホームランを打ってくれる起業家を好むように思います。

medium.com

発言力のあるスタートアップ創業者などはVCからの支援を受け、高い目線で起業したから大きな成功を収めることができたと考える人が多いため、スタートアップ周りでもやはり世界を変えることを目的とした「意識の高い起業」が主流であるように思います。

 

お金儲けがきっかけで起業してもいいでしょ

一方でアメリカシリコンバレーでもサラリーマンでは得られないような大金を求めて起業する起業家は少なくないようです。

アメリカのユニコーン企業の一つであるGustoの共同創業者も下記のTechCrunchの記事で、起業のきっかけについて創業者が受け取る莫大な金額のお金を聞いて、自分にも出来るかもと思ったことだと答えています。

「2007年ってさ、数億円から十数億円でスタートアップ企業が買収されたというニュースがTechCrunchに飛び交うようになった時期なんだだよね。希薄化とか持分とかって話もあるけど、それでも創業者が手にするお金って数億円でしょ? 23歳にしてみたら、それって聞いたことのない大金だった。だから、そういうのを見て、ぼくも『Why not me?』って思ったんだよね」(エドワード・キム氏) 

jp.techcrunch.com

冒頭で紹介した「論語と算盤と私」によると、アメリカでは「IPOを目指します!」 という起業家は少なく、最初からM&Aでの買収狙いの起業家が多いようです。日本に比べてもIPOはハードルが高い一方で、M&Aの機会は多く、IPOでのホームランを狙うよりも地に足の着いたM&Aを狙うケースが多いとのことです。

このように起業する際にも地に足の着いた出口が見えている状態であれば、「起業はギャンブル」という状況ではなくなり、適切にリスクコントロールすれば選択肢の一つとして面白いものになります。そして下記のブログで書きましたが、個人的には日本の環境は起業するのにかなり恵まれた環境であると思っています。

blog.zerotoone.jp

もちろん本来価値のないものを価値があるように見せて、高値で販売するような人を騙すビジネスは絶対にダメですが、サラリーマンでは得られない大金を若いうちに手に入れたいという動機で起業を志すのは自然なことだと思います。結局、医学部の偏差値が高いのもリスクが低く、金銭的に報われる可能性が極めて高いという経済的な理由であると個人的に考えています。起業についても経済的に報われる道が見えているのであれば自然と数も増えるのではないでしょうか。

 

1億円の金融資産があるだけで取れるリスクの量は増える

VC含むスタートアップ界隈では、数億円規模のExitはしょぼすぎて、そんな小さなExitではなくもっと大きな夢を見るべきだという風潮が強いように思います。一方で創業者の立場からすれば、数億円のExitで1億円前後の資産を手に入れることができるだけで取れるリスクの量はかなり増えます。1回失敗してもダメージとしてはなんてことないので、また起業に向かい、シリアルアントレプレナーとなる人も多いでしょう。先述の通り、米国では日本に比べてM&Aの件数が5倍ほどと多く、起業の出口として一般的です。そのため一度起業してバイアウトした起業家が再度、起業するというのが一般的だと聞きます。

 

参考:米国のM&A件数と金額の推移

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*1

 

今、最も世界規模で成功しそうなスタートアップであるメルカリも、創業者の山田さんを始め、経営陣の多くが元起業家です。元起業家が再度起業するメリットとして起業のやり方がわかっているだけでなく、M&Aなどでキャッシュインしてれば取れるリスクの量が大きくなり、より大きなチャレンジができるように思います。

www.mercari.com

起業という選択肢が一般的になり、その中の何割かが売却して創業者としては大きなリターンを得る、その上でこれまでは取れなかったリスクを取り、大きな事業にチャレンジするというサイクルが生まれてくると、メルカリのような世界規模で成功するベンチャーが増えるのかもなと思っています。

僕自身も次の起業もM&A狙いでやろうと思っていますが、その後についてはまだ考えているところです。世界規模のスタートアップを作るというのも有力な選択肢の一つかもなと漠然と考えています。

 

最後に

冒頭で「日本における起業の息苦しさ」について説明したとおり、日本では「起業=崇高な理念の達成(お金は目的じゃない)」というのが、大企業や一般の人だけでなく、起業を推奨するはずのスタートアップ・VC界隈にも強くあるように思います。一方で米国ではM&Aの出口が日本よりも広いため、最初からM&A狙い(お金目的)で起業する起業家も少なくないといいます。だからこそ日本に比べて起業が多く、優秀な人ほど起業するのかもしれません。

僕個人としては、起業する人が増えて日本の経済が活性化するといったマクロの視点では特に物事を考えていませんが、純粋に一人のバイアウトを経験した人間として 起業という選択肢が持つ「美味しさ」を多くの人に伝えられればと思っています。

 

ブラック企業ほどビジョンを大事にする

厚生労働省は長時間労働や賃金不払いなど、悪質な労働関連の法令違反をしたブラック企業リストを公表し、今後は毎月更新することを発表しました。

www.huffingtonpost.jp

 

近年では雇用環境が回復しつつあり、雇用環境の改善とともに劣悪な労働環境で労働者を搾取している、いわゆる「ブラック企業」に対する批判が強まっています。ベンチャーやスタートアップも「ベンチャーだから」という理由を免罪符に悪い労働環境が横行しているように思うとともに、そうしたブラックなベンチャー・スタートアップほど綺麗な「ビジョン」を大切にしてるように感じたのでまとめてみたいと思います。

 

ホワイトな企業はビジョンを気にしない

僕は新卒では総合商社に入社したのですが、この会社のビジョンを気にして働いている人は多くありませんでした。同様に外資系投資銀行や外資系コンサルなどの企業に就職している知り合いたちも、ビジョンについて特に気にしているようには思えません。

ビジョンがないからと言って、やる気がなく怠惰に仕事をしているわけではなく、仕事を楽しんで、成果もあげているように思います。少なくとも離職率は低く、満足度もベンチャー企業に比べても高いものがあると思われます。

結局、待遇がよく、仕事も面白い会社はビジョンを気にしなくても従業員は自発的に働いてくれるということだと個人的には思っています。

 

ブラックなビジョナリー・カンパニー

スタートアップやベンチャー企業の社長ほど、「ビジョナリー・カンパニー」に影響されてか、ビジョンを熱く語るように思います。

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

 

一時期ブラック企業の代表格として扱われてしまっていたワタミグループですが、ここもビジョンを全面に押し出す会社として有名でした。「地球上で一番たくさんの“ありがとう”を集めるグループになろう」というワタミグループの理念については聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

 

bookfort.hatenablog.com

 

なぜブラック企業は理念を大切にするのか

ブラック企業が理念を大事にするのは、それがブラック企業本体にとって経済的に合理的であるからと考えられます。

採用に効果がある

一つ目の理由は採用に効果があるというものです。給与も高くない、福利厚生も充実していない、働いている人も大手企業に比べると優秀ではない人が多いなどなど、スタートアップ・ベンチャー企業には様々な「ない」に溢れています。それでもビジネスを成長させていく上では、人材、それもできるだけ優秀な人材を採用することが不可欠です。ないない尽くしのスタートアップ・ベンチャー企業ですが、「理念」については無料でほとんどコストをかけることなく作ることができます。

ビジョンや築きたい未来を全面に押し出し、「大変なこともあるけど一緒にそのビジョン達成に向けて働こう!」ということでイケてる会社感を出すことができ、採用にはかなりプラスになるといえます。

 

長時間労働や低い給与に対する免罪符・モチベーターとしての機能

そうしてビジョンを全面に押し出して採用した上で、今度は入社してからの長時間労働や低い給与に対する免罪符としてビジョンは機能します。「入社前からビジョンの達成に向けて苦労をともにしようと言ったじゃないか」といった形で入社してきた人たちを説得する上でもビジョンが有効活用されます。

ビジョンを全員に浸透させ、全員がそのビジョン達成のために動いている姿を見せることで新しく入ってきた人たちのモチベーションを高めるための役割も果たしています。

 

一人あたり売上高の低い労働集約的な企業がビジョンを掲げやすい

上記の通り、「ビジョン」を掲げることは人を採用しやすくして、長時間労働をある種自発的に社員が行うように仕向けることができます。そのため大量に採用を行う必要のある労働集約的なビジネスを行っている飲食店、人材業界などにビジョンを掲げるインセンティブが働きやすくなります。

 

そうはいってもホワイトなビジョナリーカンパニーは素晴らしい

「Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることです。」を目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。Googleと同様にfacebookも「共有を広げ、世界をもっとオープンにし、人々の繋がりを強める」という理念を持っています。

どちらの企業も世界的な人気企業で、給与も高いことが知られています。

www.co-media.jp

このようにビジョナリーなホワイト企業はやっぱり組織としても強く、働く環境としても素晴らしいといえます。

 

Googleもfacebookも最初からビジョンがあったわけではない

勘違いされがちですが、Googleもfacebookも最初は大学生の趣味的な活動から始まっており、最初から壮大なビジョンを掲げてきたわけではありません。事業を続ける中で上記で掲げたビジョンを明文化してきたものだと思われます。徐々に徐々にビジョンを明文化していくことがやっぱり大事で、採用したい・従業員の離職を食い止めたい、コストをかけずにモチベーションをあげたいなど短期的な合理性のもとにビジョンを作ってしまうのは不幸を生む可能性が高いのかなと思っています。

 

結果×ビジョンではじめて人を引きつける効果がある

出会い系アプリ「Pairs」を運営するエウレカの創業者である赤坂さんも、ビジョンについてこのようなことを語っています。

結果×ビジョンには、多くの人を引き寄せる力があります。しかし、結果がともなっていないビジョンを社外で語るのはビッグマウスになるだけです。
ビジョンを語っている暇があったら、結果を出すための時間に費やしたい。エウレカの場合、何かしらの結果が出るまではメディア露出や交流会、イベントにも行きませんでした。その代わり、西川と「辛いね…」と言い合いながらお酒を呑んだり、気分を変えて社員たちと飲みに行ったりしていました。社員たちとの飲み会で「会社が楽しいです!」と言われて、「そっか。じゃ、餃子も頼んでいいぞ!」と小さく喜ぶ日々を淡々と重ねていた気がします(笑)。

thefirstpenguin.jp

個人的にはすごくしっくりくる内容で、売上もあげてない、結果もでていない企業がいきなり壮大なビジョンを掲げることには違和感を感じています。 

 

最後に

創業経営者として、個人的に売上規模も大きく、多くの従業員を雇っている企業について憧れと尊敬の念がある一方で、そういった会社がブラックな待遇で従業員のモチベーションも低い現状をみてしまうと、そういう会社を個人として作りたいのかなということは考えてしまいます。僕としては「3人で1億円の売上がある会社はハッピー」というこの本に書いてあるような会社を作りたいと思う傾向が強いです。

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「どんな会社を作りたいか」という問については僕自身としてもまだ明確な答えが持てていません。今後ブラック企業やいいと言われる会社をよく見ながら、また自分としても会社を経営、立ち上げながら考えていきたいと思います。

大企業がスタートアップを潰した事例、潰せなかった事例

先日このブログを書いたら想定以上にバズりました。

blog.zerotoone.jp

 

コメントは注意深く読ませていただいたのですが、その中で気になったのが「大企業がスタートアップを潰した事例の方が多いのでは」というものです。そこで今回は大企業がスタートアップを潰せた事例と潰せなかった事例について調べてみました。

しかし僕自身の知識が及ぶ範囲も狭いのでもしよければコメントやTwitterで当てはまる事例をどちらでもいいので教えてください。追記させていただきます!

ちなみにここで使っている「潰す」という言葉は、「大企業がスタートアップが立ち上げた事業領域に後発的に参入して、その資本と人員を利用してその領域でNo.1になる」という意味で使っています。

 

大企業がスタートアップを潰せなかった(潰せなそう)事例

先に大企業がスタートアップを潰そうとして潰せなかった事例について見ていきます。

 

楽天とクックパッド

先日のブログでも書きましたが楽天は2010年に楽天レシピに参入して、成長著しかったクックパッドを潰そうとしましたが失敗しています。

value-design.net

2010年に参入したときには大規模な会員基盤を持つ楽天がクックパッドを捻り潰すのではと言われていましたが、結果としてはクックパッドが成長を続けて、レシピ領域ではNo.1を保ち続けています。

 

クックパッド料理動画とクラシル

上記で紹介した先日のブログの通り、料理動画の動画数でクラシルはクックパッド料理動画を圧倒しています。レシピ領域ではクックパッドにまだまだ分がありますが、料理動画という点ではクラシルは潰すにはなかなか簡単にいかないフェーズになっていると思っています。

それにしても過去は大企業の追撃を凌いだスタートアップだった企業が数年経ち、今度は大企業側としてスタートアップから追撃されるのは、過去に魔王を倒した勇者が世界を支配する魔王になってしまう的な熱い展開だと勝手に思ってます。

 

リクルートのポンパレとグルーポン

2010年8月にグルーポンが日本に上陸してから爆発的に同様のサービスがオープンしたフラッシュマーケティング領域ですが、リクルートもグルーポンとほぼ同時期に参入しています。一時期シェアトップに躍り出たポンパレですが、2017年4月に現在の共同購入でのサービス提供を終了し、今後は別の形でサービスを継続することを発表しました。

shopping-tribe.com

グルーポンについては売上好調などの話はきかないものの、まだ運営しているため、リクルートが参入したけど潰せなかったものとしてカウントしました。業界全体として苦戦していることが見受けられます。

www.j-cast.com

 

DeNAのcommとLINE

2011年にLINEが切り開いたメッセージングアプリの市場にも多くのスタートアップが参入しました。2012年にはゲーム領域で築いた莫大なキャッシュを投じてDeNAが満を持して参入しました。commについては吉高由里子さんを起用してCMを打ち、70名体制でLINEに勝負を挑んだものの、敗退する結果となりました。

 

www.youtube.com

 

大企業が覚悟を持って多大なキャッシュと人材を投じたものの、潰しきれなかった事例として興味深いと思っています。(LINEのバックが韓国の老舗インターネット企業のNHNであるため、スタートアップとしてカウントしていいかは判断が割れますが。。。)

www.kagua.biz

 

住友商事のReal Teachersとレアジョブ

オンライン英会話事業も多くのスタートアップと大企業が参入したマーケットです。このマーケットはレアジョブと完全に後発のDMM英会話がゴリゴリしのぎを削っておりまだ勝負は決していませんが、半端な覚悟で参入した住友商事が提供していたサービスでは勝負になりませんでした。

www.sumitomocorp.co.jp

 

ちなみにこのオンライン英会話領域については、レアジョブの元執行役員の方がブログにて100社以上の大企業、スタートアップが参入したと書かれています。

yuichiro826.com

 

大企業がスタートアップを潰した事例

次に大企業がスタートアップの領域に後発的に参入してNo.1を取った、もしくは取れそうな領域についてご紹介しますが、正直あまり思いつきませんでした。ぜひこの領域で事例を知っているという方はコメントやTwitterなどで共有していただきたいです。

 

リクルートのAirレジとユビレジ、スマレジ

タブレットレジ市場は、スタートアップ企業のユビレジが2010年に参入してから、スマレジが2011年に参入し、最後発のリクルートがAirレジで2013年に参入しました。

rejichoice.jp

リクルートの2017年度の決算説明資料によるとAirレジの導入店舗は約28万店舗となっています。

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スマレジについては、少し古いリリースになりますが、2016年のプレスリリースにて導入店舗数が2万店舗を突破したと発表していますが、後発のAirレジとは10倍以上の差がついているようです。

smaregi.jp

ホットペッパーで囲い込んでいた店舗に対して導入支援する形で、一気にシェアを伸ばしたのが成功要因だと考えられます。もちろんトップが相当な覚悟で参入を決意し、営業マンにもKPIとして落とし込んだからこその成功だと思います。

 

リクルートのスタディサプリとアオイゼミ

またまたリクルートの事例になりますが、動画授業サービスのスタディサプリは先述の2017年度決算説明資料によると、有料会員数が24万人を突破しています。高校生の数が大体300万人、大学進学率が50%なので、150万人が対象マーケットと考えると対象高校生の16%程度のシェアを獲得しています。

同じく動画授業サービスを提供するアオイゼミは、リクルートより先行する形で参入しましたが、直近のリリースによると会員数が30万人を突破したとありますが、リンク先のグラフから考えると累計の利用者数と思われます。

 

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出展:スマホ学習塾「アオイゼミ」、会員数30万人を突破!プレミアムプランが無料で使える「ありがとうキャンペーン」を開催 – 株式会社葵

 

アオイゼミでは無料会員登録もできるため30万人の数字にはそれも含まれている可能性が高いことを考えると、リクルートのスタディサプリの「有料会員数24万人」が凌駕していると考えられます。

 

5/19追記:DMMオンラインサロンとシナプス

2017年2月にDMMはオンラインサロンを運営するシナプスの買収を発表しました。

jp.techcrunch.com

オンラインサロンは2012年にシナプスがサービスを開始してから市場が生まれた領域で、DMMは後発で、2016年に参入しました。DMMは後発で参入したものの、豊富な資金と人材を投下するとともに最終的には2017年に最大のライバルであるシナプスを買収する形で業界シェアトップの座を確かなものにしました。

 

5/19追記:DMM英会話とレアジョブ

上記で大企業を退けたと紹介したレアジョブですが、DMM英会話には苦戦というか業界トップシェアを奪われてしまっているようです。レアジョブの創業が2007年に対して、DMM英会話は2013年と最後発の部類に入りますが、下記の記事にもあるように業界シェアではトップに躍り出ているようです。

liginc.co.jp

中途半端な覚悟の大手の参入には勝てたレアジョブでしたが、経営者が本気の覚悟で大量の資金を投下したDMMには苦戦を強いられてしまったようです。DMM英会話とレアジョブについてはNewsPicksでのこの対談も話題になりました。

newspicks.com

 

こちら2つの事例はTwitterで下記コメントいただいてから調べて追記させていただきました、ご協力ありがとうございました!競争中のものについては今後、勝敗が決したタイミングで追記できればと思ってます。

 

最後に

色々調べてみましたが、やはり大企業が後発で参入してスタートアップを凌駕するのはなかなか大変なのではないかな、一方でリクルートやっぱりすごいなと思わされました。もちろん僕の知識不足があり、取り上げた事例が少なかったのでぜひコメントで事例を教えていただければ追記しますので、ご協力よろしくお願いします。

 

7割が起業したくない日本は起業するのに最高の環境だと思う理由

先日、こんなニュースが話題になっていました。 

www.excite.co.jp

特に18〜24歳の若年層の起業意識に関して、グローバルの平均が63.8%に対して日本では23.8%と非常に低く、また「スタートアップで働きたい」もグローバル60.0%に対して、日本は30.4%だったそうです。

このような調査結果が出る中で、起業して売却することができ、ハッピーな状態になれた人間の一人として意外にも日本は起業するのに悪くないというかかなりいい環境だと思っており、その理由をいくつか挙げていきたいと思います。

 

国内GDPがでかいのに外資の参入が難しい

これが一つ目の理由ですが、日本ってネガティブなニュースが流れまくるので中にいると実感できないのですが、国内GDPはアメリカ・中国につく世界3位で、先進国フランスや成長著しいインドの倍あります。

その上、日本語の壁と日本特有のガラパゴス的な商習慣があるため外資の参入が難しいといえます。近年では欧米の企業も「ジャッパンパッシング」の傾向にあると言われ、アジアに投資するのであれば日本ではなく成長著しい中国に進出するケースが多くなっているようです。

このような状況のため、欧米の外資系企業が日本には参入しづらく、起業するといっても競合は日本国内の人材のみになります。これが国内GDPが低く、参入障壁が低い国の場合、最初からグローバル進出前提で起業する必要があり、グローバル競争で敗退する危険性も高まります。

 

起業したい人が少なく優秀な人が大企業に入社するので競争環境がぬるめ

前述の通り、外資の参入が難しい市場のため、日本人同士の戦いになるのですが、冒頭の調査結果の通り、多くの人が起業したくない日本は競争環境が厳しくないと考えられます。

僕も新卒で総合商社に入社した身なので、人のことは言えないのですが、若い人の多くは取り敢えず大企業を目指す傾向が強いといえます。一度入社すると終身雇用でよっぽどのことがない限り、会社を辞めさせられることがない一方で、一度退職すると出戻りするのが難しいため自主的に辞めるインセンティブがかなり低くなります。

そのため、日本の起業の競争環境は優秀な人ほど起業すると言われるアメリカや取り敢えず商売で一発当てたいと考える人が山ほどいる中国に比べるとぬるめの環境なのではないかと思っています。 

 

IT化での効率化の余地が大きい

外資系の参入障壁が高く、起業したくない人の多い日本ではIT化による効率化の余地がたくさん残されています。特にインターネットと関わりの薄いリアル店舗系のビジネスではいまだに90年代後半かと思うようなデザインのサイトで運営しているところも少なくありません。今後の起業の一つのトレンドとしては、ITでの効率化が遅れている市場に「その分野の専門家+ITの専門家」のチームで事業を立ち上げるというのがあると思っています。(既にその波はきているのかもしれませんが)

先日、ランチさせていただいた方は三井物産出身で非効率な物流市場に対してITでの効率化を図ろうとしていました。このような分野の起業が今後は一つの大きなトレンドになるだろうし、この分野についてはまだまだ中小零細企業が多い分野であり外資の参入も難しいだろうなと思わせます。

jp.techcrunch.com

 

M&Aでの出口が広がってきた

1999年までは日本のM&A件数が1000件に満たず、起業をしたらIPOするかプライベートカンパニーとして保有し続けるといった形で出口が非常に狭い形でした。僕らより上の世代の人が「起業するということ = 一生そのビジネスで食べていくこと」という意識が強いのもこのように出口が狭かったのが一つの理由かと思っています。

 

参考:1985年以降のマーケット別M&A件数の推移

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*1

 

一方で99年以後、M&Aの件数が1000件を超え、近年では2000件を超えてきています。大企業によるスタートアップのM&Aも活発になってきており、起業してさっと売却して次の起業をさらに見据えるといった動きもできるようになってきました。僕自身も再度、M&A狙いでの起業を考えていますがこの出口の広がりがなければできなかったことだなと思っています。僕自身がIPOではなく、M&Aを狙う理由については下記もぜひ読んで下さい。

blog.zerotoone.jp

 

なんだかんだ雇用が安定している

日本の雇用環境については問題提起も多く、解決しなければ課題は多い一方で、世界的に見ても若年層の失業率は低く、なんだかんだ雇用は安定しているように思います。

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近年では景気回復の影響もあり、第二新卒の採用が活発になってきている、ネット系の新興企業を中心に転職が一般的になりつつあり、年齢が高くなっても受け入れる企業が増えてきたように思います。

僕らが起業したのは2011年で、東日本大震災や未曾有の円高もあり、日経平均株価は8000円台で景気がいいとはとても言えない状況でした。そんななかでも共同創業者は「最悪失敗しても松屋か佐川急便でバイトすれば生活もできるしお金も貯まるからまたチャレンジできるでしょ」と気軽な考えを持っており、僕自身も「松屋か佐川急便でバイトまでしなくても、今勢いのあるソーシャルゲームの会社とかネット系企業なら雇ってくれるでしょ」と考えていました。

もちろんこれは当時独身で20代後半とまだ若く、そこそこの学歴と職歴があったから言えたことではありますが、探せば人手不足で自分ができる仕事は十分にあるのかなと思っています。

 

リスクコントロールできれば起業は美味しい

 

最近こんなことをつぶやきましたが、ちゃんとリスクコントロール出来れば起業はアップサイドの大きい美味しい選択肢になりうると思っています。もちろん独身or既婚、子持ちかどうかでリスクの取り方、取れる総量は変わりますがうまくコントロールしようとすれば起業したことで致命傷になることはありません。近年ではITの領域であれば最初に大きなお金は必要なくリスクも非常に小さいといえます。

リスクコントロールについてはこんなのも書いているのでぜひ参考にしてください。

blog.zerotoone.jp

blog.zerotoone.jp

 

最後に

「成功したからこんなこと言えるんだろ、生存者バイアスだ」と言われれば確かにそのとおりかもなと思う一方で、世界と比べてみると日本の環境は起業しやすいのは事実なんじゃないかなと思っています。僕としては書いてるブログの内容を見てもらえればわかるかもしれませんが「逆張り志向」がそこそこあります。世間の人が起業は危険だと言えばその隙間を狙いたくなるタイプの人間です。

相場の格言で「人の行く裏に道あり、花の山」という言葉があります。

www.nomura.co.jp

 

世間とくらべて大きく抜きん出るためには、この相場の格言の通り、一定のリスクは犯す必要があるのかなと思います。一方でリスクは取りすぎずに起業しても再起が図れるようにコントロールしながら多くの人が「起業」という選択肢に向き合ってもらえるとうれしいです。リスクのコントロール方法についてはここで紹介した本もオススメなので参考にしてください。

blog.zerotoone.jp

 

 

クラシルとクックパッドにみる大企業がスタートアップを簡単には潰せない理由

少し前にレシピ動画サービス「kurashiru[クラシル]」を運営するdelyが総額30億円の資金調達をしたことで話題になりました。

 

jp.techcrunch.com

 

delyについては、中の人とはまったく面識がありませんが、我々がシャレー渋谷にオフィスを構えていた時に彼らも同じビルにいたことから勝手に親近感を感じています。今回はクラシルとクックパッドを題材に、常々考えていた「大企業がスタートアップを簡単には潰せない」説について考えを深めたいと思ってブログ書きました。

 

大企業が参入すればスタートアップを簡単に潰せると思う人は多い

特に大企業側の人に多いのですが僕の周りの人でも、豊富なキャッシュを持つ大企業が新しく立ち上がった市場に参入すれば簡単にスタートアップを潰せると考えている人は少なくありません。

一方でタイトルの通り、僕はそこまで簡単にはいかないと考えています。歴史的にも2010年当時、既に7000万人以上の会員と豊富なキャッシュがあった楽天クックパッドを潰すべく楽天レシピを立ち上げましたが、結果は歴史が証明しているとおり惨敗しています。当時は、企業規模として圧倒的に大きい楽天がレシピ領域に参入すれば、十分にクックパッドを抜けると騒がれていました。

ちなみに2010年度の売上は楽天が3460億円、クックパッドが32億円と100倍の差がありました。それでもクックパッド楽天に潰されることなく、料理レシピ領域では圧倒的No.1として成長を続けました。

「大企業がスタートアップ簡単に潰せない」問題について、僕なりに考えた理由をあげたいと思います。

 

理由1:キャッシュをそこまでつぎ込めないから

大企業というと資金が豊富にあり、新規事業にも湯水のようにキャッシュをつぎ込めると深く考えずに思い込んでしまっている人は少なくありません。ですが実際にはうまくいくのかわからない新規事業にそこまで資金を投下することはできず、対応が遅れることがままあるといえます。

具体的な数字で説明すると、クラシルは今回調達した30億円をすべて人員採用や広告費につぎ込むでしょうが、クックパッドは30億円の資金をレシピ動画の領域に簡単には突っ込めません。クックパッドも大きい会社ではありますが、2017年5月現在の現預金は170億円、2016年度の営業利益も50億円レベルです。そんな中で30億円を、伸びてるけど成功するかわからないレシピ動画市場に突っ込むにはかなり勇気のいる経営判断が必要になります。しかも30億円は攻めの投資というよりも、迫り来るクラシルを撃退するための守りの投資なので、余計に判断が難しくなると思っています。

判断が遅れる中、レシピ動画領域での差はどんどん広がります。既にクラシルの動画数とクックパッド料理動画の動画数にはかなり大きな差があり、クラシルはこのレシピ動画領域の一点に絞って資本を投下しノウハウもためるため、クックパッドがどうしようか考えている間にその差は広がる一方だといえます。

  動画数 更新数 / 日
クラシル 約6000 20本程度?
クックパッド 約1900 1~2本

*1

 

もちろん創業者の佐野さんが騒動を巻き起こしてでも返り咲いたクックパッドなので大胆な経営判断がされる可能性もありますが、なかなか大変だと思っています。

 

理由2:人材の量と質が劣るから

キャッシュだけでなく人材の量と質にも差が生まれると思っています。そもそも大企業には人は余っていません。優秀な人材は既存事業を成長するために頭も時間もいっぱいいっぱいに使って、前年対比120%以上の成長を求められています。1億円の売上を生み出すのも、0の状態から1億円を生み出すのはかなりしんどいですが、既存事業で100億円の売上があれば、1%成長させるだけで1億円の売上が生み出され、20%成長させれば120億円になります。大企業では後者の成長が重要であり、後者の成長を支えるために優秀な人材を採用し割り当てています。

そして奇跡的に優秀な人材を何名か割り当てたとしても、あくまでサラリーマンとして優秀な人材であり、新規事業を立ち上げたり、急速に成長させるためにゴリゴリ物事を進めるスタートアップに求められる優秀さがあるかはわかりません。クックパッドで言えば、どちらかというとゆったりとした従業員もサービスを愛してる「いい会社」というイメージが強く、その中で優秀と言われる人材が成長を半強制的に約束されたスタートアップとどこまでガチンコでやりあえるのかという点で疑問を持っています。

 

クラシルがうまくいくかは別問題でわかんない

クックパッドは簡単にはクラシルを潰すことはできないと思っていますが、クラシルが成功するかは別問題です。ビジネスモデル的にクックパッドが優れているのはSEOで広告費用を投下する必要がなく、ユーザーを獲得出来る点です。2016年度のクックパッドの広告宣伝費はわずか8000万円で、売上対比で約0.5%しかありません。そのためクックパッドは営業利益率がかなり高いモデルで50%を超えています。

一方でクラシルは動画のためSEOが効きにくいモデルで、ユーザーの獲得のためには広告に頼る必要があるように思います。ビジネスモデル的にはクックパッドというよりも、gunosyが近いのかなと勝手に思っており、他社の媒体を収集すればgunosyに比べると料理動画を内製する必要があるため、原価が高くなるので営業利益率はちょっと低めにでるのでは?と勝手に思ってます。ちなみにgunosyは広告宣伝費が売上対比約40%、営業利益率も12%程度となっています。

gunosyは上場ゴールでは?と言われたものの、CPAとLTVを緻密に計算ししっかりと伸ばしているように思います。クラシルでもCPAとLTVを最大化するための施策が大事になりそうだなーと思っています。

 

最後に

僕自身、商社から大手クレジットカード会社の新規事業系の部署に出向した経験と、現在M&Aで規模の大きな会社に買収されロックアップ期間で中にいる経験から、大企業とはいえリソースはパツパツで、新規事業に一気に注ぎ込むのは難しいなと実感してます。大企業とはいっても簡単にはスタートアップ潰せないと思ってるのですが、この2社の動向については今後も外野から楽しく見守りたいと思ってます。

*1:※2017年5月12日現在にサイトに掲載されてる動画数をページ数から算出

僕が起業する時に株式上場ではなくM&Aを目指す理由

僕自身の周りの起業家の多くが当初からIPOを目指しているケースが多い中、僕自身は次に起業するときもM&Aを狙おうと思っています。今回はその理由について自分自身の考えを整理することで、既に起業している、今後起業を検討している方の参考になればうれしいです。

※現在の僕の気持ちなので、当然、今後の状況次第では「IPO目指すんだ!」と豹変する可能性も十分ある前提でお読みください。

 

理由①株式上場に比べるとM&Aは出口が広い

僕自身は前回の起業でM&AでExitしているため、そこそこのキャッシュは保有した状態ですが、生活のために働かなくていい水準には少し足りてません。そのため個人的な目標として40歳までに資産5億円〜10億円を保有して生活のために働かなくていい状況を作りたいと思っています。

そのため次の起業では、確度が高く数億円単位のキャッシュインが見込めることを重視しており、そのためIPOよりも出口が広いM&Aを志向しています。

 

IPOの年間件数は多い年でも年間100件ぐらいです。参考までに東京証券取引所の上場件数は、2015年95件、2016年84件となっています。

www.jpx.co.jp

 

それに対してM&Aは年間2000件ぐらいで、これはM&Aの統計で測れている範囲で、実際にはM&Aは会社の身売りだから公表したくないという経営者はまだまだ多く、統計で補足できないM&Aを含めると実数はもっと多いと予測されます。

 

www.marr.jp

件数的には少なくとも20倍以上で間口が広く、上場に比べるとM&Aはハードルが低く、M&AでのExit経験もあるので狙いやすいというのが一つ目の理由です。

 

理由②IPOすると会社を辞めるハードルがかなり高くなる

僕自身はやりたい時にやりたいことをできるという「自由」に対して高い価値を感じる人間です。だからこそ会社のルールに縛られる会社員ではなく、自分自身で会社のルールを作ることができる起業家になりたいと思って起業しました。

そのような志向性のため、IPOした際には社会の公器、その中でも社会的に広く認められた上場企業の代表者として公人としての扱いを受けるのは自由に対する束縛が強そうな印象を持ってしまいます。(経験がないのでわからないのですが)

公人になるのが嫌なのであれば、上場したらさっさとやめればいいというわけにもいかず、代表取締役の退任は適時開示事項であり、創業者兼代表者の退任が会社および株価に与える影響を考慮し、事前に影響がないように根回しをする必要があるでしょう。特に日本においては、0から1と会社を立ち上げるのが創業者、1から100と会社を成長させるのはプロ経営者といった住み分けがなく、創業者と経営者というものは一緒くたにされがちな印象を受けます。

一方、M&Aであれば基本的にはロックアップ期間中に買収された会社の人に引き継ぎを行い、ロックアップの期間が終了すれば創業者は問題なく退任することができるケースが多いです。

僕個人としてはまだ一生をかけて取り組みたいと思えるテーマに出会ったわけではなく、自分の考えを元に事業を立ち上げるのがやりたいのでいくつも事業を立ち上げる経験をしたく、また人生における自由度を確保したいという意味でもIPOよりもM&Aを狙いたいと思っています。

 

M&Aの金額感の目安は10億円前後

ちなみに次の起業では10億円前後のM&Aを狙いたいと思っていますが、その理由は10億円以上のM&Aを出来る会社はかなり限られ、出口が狭まるからです。

M&Aの資金を借入でやるネット企業は少なく、基本的には余剰資金で賄うケースが多いと思われますが、インターネット系企業だと現預金を100億円以上溜め込んでいる企業は少なく、ちなみに一部上場企業のアイスタイルでも2017年現在、現預金は50億円程度、こちらも一部上場のリブセンスでも30億円程度となっており、この規模の会社でも10億円のM&Aはそこそこ勇気のいる経営判断が必要になるレベルになります。

もちろん近年では朝日新聞がオウンドメディア立ち上げのサムライトを買収したり、KDDIがSyn.ホールディングスを利用してインターネット系企業を積極的に買収するなどキャッシュリッチな非インターネット系メディアによるネット系スタートアップの買収が行われているので、数十億円規模でのM&Aも増えて来そうです。一方で出口を広く持つという意味では10億円というのは一つのハードルとして考えておく必要があるかもなと思っています。

M&Aを目指すものの「時間軸」は気になる

いくらM&Aの方が出口が広く、やりやすいからと言って、ちゃんとM&Aされるレベルの事業を作るには最短でも準備に1年、事業作るのに3年、ロックアップで2年の合計6年間は必要だと思っています。そう考えると6年も費やすなら32歳という年齢を考えても大振りでデカいこと目指した方がいいような気もしています。

とは言っても個人的には高い山を目指したからと言って必ずしも登れるわけではなく、着実に一歩ずつ前進することが大事で、その一歩一歩が確実に見えること、そして自分として十分にイメージできるゴールを目指した方が性に合ってるように思うので経験のあるM&Aで前回よりは規模の大きい買収は現実的な目標としていいのではと考えてこのような目標設定にしています。

 

最後に

世界を変えるとか、誰もが知ってるサービスを作りたいといった大きなビジョンはまだ描けず、我ながら小物っぽいことを考えているなと思ってしまいます。もちろんこの志向性は今後ガラリと変わる可能性はあって、次の起業もやりながら面白くなって、どうせ目指すなら高い山と思って登り始めるかもしれません。だけど今の気持ちとしてはこんなことを考えているということで整理してみました。今後起業を目指す人や、Exitはしてないけど既に起業している人の参考になれば幸いです。